2022年に国土交通省が開始した「乗務後自動点呼制度」。
これにより、乗務後の点呼が、ロボットを使ってできるようになりました。
いわゆる「ロボット点呼」です。
当社(山梨通運株式会社)では、このロボット点呼を山梨県内でいち早く導入し、日々運用しています。
ロボット点呼の導入の流れや、実際に運用してみて気づいた事、感じたメリットなどをご紹介させていただきます。
物流・運送のトラック事業における点呼とは?
トラック事業における点呼は「貨物自動車運送事業法 輸送安全規則 第七条」に定められており、乗務前と乗務後の点呼が義務付けられています。
原則、運行管理者による、対面での点呼が必要です。
点呼で確認する項目は多岐に渡り、主な項目としては下記のようになります。
・運転するトラックの車両番号(車番)
・酒気帯びの有無
・ドライバーの疾病、疲労の確認
その他、必要事項が細かく定められています。
IT点呼とは
IT点呼は、原則として対面により行う点呼を、IT機器を利用する事で、管理者と乗務員が遠隔地にいながら、実施する事ができるようにしたものです。
管理者と乗務員が同じ場所にいない場合でも実施する事が出来て、双方の負担を軽減する事が可能ですが、IT点呼を実施するためには、法令順守の意識が高い、優良とみなされる営業所である事が条件となります。
IT点呼における優良事業所とは、国土交通省が推進する「安全性優良事業所」の認定制度である「Gマーク」を取得している事業所を指します。
※「Gマーク」を取得していない事業所がIT点呼を導入するためには、
・過去3年間で重大事故を起こしていない
・過去3年間で点呼の実施違反についての行政処分を受けていない
事など、条件を満たす必要があります。
IT点呼は、通常の対面点呼とはIT機器(スマートフォン等)を通して遠隔で行うという違いはありますが、人の管理者が乗務員と同時刻に実行する。という意味では、対面点呼と本質的には同じものです。
ロボット点呼とは
これまで対面点呼以外の点呼は、上のIT点呼以外も、遠隔点呼、共同点呼など、色々な様式が採用されてきました。
ですが、そのどれもが、遠隔にいる・近くにいるという違いはあったものの、人である管理者と、乗務員が同時刻に実行するものでした。
これに対してロボット点呼は、人の管理者が不在でも、乗務員と、点呼機能を備えたロボットにより、点呼を行う事ができるというものです。
人の管理者による点呼は、トラックの安全な運行に欠かせないものですが、例えば深夜などに帰着する大型トラックの乗務後点呼などは、少なからず運行管理者に負担をかけるものではありました。
そんな中、人の管理者が不在でも点呼が行える「ロボット点呼」が考案され、2021年~2022年には、全国で実証実験が行われました。
そして2022年12月、まずはロボットによる乗務後点呼が解禁されました。
ロボット点呼 導入の流れ
当社ではロボット点呼の導入にあたり、ロボット点呼の技術を有するパートナー企業様にご依頼をさせていただきました。
ロボット機器の選定から設置、点呼時のデータを確認するためのシステムのセットアップまでをワンストップでお引き受けいただき、安心してお任せする事ができました。
ロボット点呼 運用について
現在、当社では、ロボット点呼を実施する際には、人の運行管理者による二重チェックを実施しています。
現在は改善されましたが、導入直後はロボットのフリーズなども発生していました。
まだまだ始まったばかりの仕組みではあるので、安全を最優先に考え、二重チェックを行っています。
現在の移行期間を経て、いずれはロボット点呼による点呼の無人化を実現していければと考えています。
ロボットによる乗務後点呼で、当社でチェックしている項目は以下の通りです。
【顔認証】
ロボットは乗務員それぞれの個人情報を記録しており、顔認証によってその個人情報データと、点呼を行う乗務員を紐づけています。
顔認証が出来ない=本人ではない場合、点呼を実施する事は出来ないようになっています。
【アルコールチェック】
重大事故に繋がる酒気帯び運転は絶対に許されないものですし、大型トラックを扱う物流・運送に携わる会社としては、なおの事、責任を持って対策にあたるべきものと考えております。
ロボット点呼では、呼気に含まれるアルコールを感知する機器とロボットを接続し、アルコールチェックを行います。
【体調の確認】
乗務員の体調を確認するステップです。
こちらは、現状は乗務員の自己申告した内容を記録する形になります。
【道路状況について】
道路状況について、普段に比べて変わった点などがあれば、ここで乗務員が申告を行い、記録されます。
道路状況についてのデータは、その後の運行管理などに役立てる事が可能です。
ロボット点呼のメリット
日々、運用を続けているロボット点呼ですが、無人で点呼が出来る事はもちろん、「点呼時の記録の自動化、一括管理が出来る」事が、大きなメリットだと考えています。
今までの対面点呼では、点呼内容を記録するためには、手書きでメモを取ったり、その場でPCに打ち込んでいたのですが、データをまとめて管理するのは、それなりに工数のかかる作業ではありました。
ロボット点呼では、ロボットとクラウドのシステムが連動し、点呼時のデータを自動的に記録し、一括で管理する事ができます。
点呼の項目についても、プログラムした通りに順番に、正確に行ってくれるので、漏れがありません。
点呼は毎日行っていくものですから、確実に記録を取ってくれて、後のデータ管理もしやすいロボット点呼は、とても役に立っています。
ロボット点呼によって運行管理者の負担を減らす事で、運行管理者の本来の主業務である物流の運行管理や、ご依頼主様や運転士とのコミュニケーションの質を高めていける事が、大きなメリットだと考えております。